長年、普仏戦争はスペイン王位継承問題を巡る突発的な対立と説明されてきた。だが、ベルリンとパリの秘密公文書館から開示された新資料は、全く異なる光景を映し出している。宰相オットー・フォン・ビスマルクが仕掛けた綿密な計算と、それにまんまと嵌まったナポレオン3世の外交的焦燥が重なり合った、冷徹な劇薬だったのだ。
フランスの世論を極限まで煽り立て、相手から宣戦布告させる――これこそがビスマルクの狙いだった。開戦の口実を与えられたフランスは勢いづいたものの、軍備の近代化と参謀本部の組織力で勝るプロイセンに翻弄されていく。皇帝ナポレオン3世の敗北は、個人の無策ゆえではなく、旧態依然とした帝国システムの限界が招いた必然の帰結だった。