こうした日本社会の歪みを解き明かした彼の名著が『若者と労働』や『ジョブ型雇用社会とは何か』である。同書は単なるビジネス書を超えて、日本の労働法学や社会学に決定的なインパクトを与えた。
『若者と労働』では、若者が職場で直面する不条理や就職氷河期以降の雇用の流動化が、個人の自己責任ではなく「解雇規制とメンバーシップ構造のアンバランス」に起因していることが克明に描かれた。続いて刊行された『ジョブ型雇用社会とは何か』は、「ジョブ型」という言葉が単なる人事トレンドとして消費される風潮に対し、欧米の歴史的背景と法体系の違いを提示して議論の軸を修正させた。これらの著作を通じて構築された理論は、労働政策の立案現場から企業の経営企画室に至るまで、今なお強固な参照点であり続けている。