かつての給食室では、朝早くから巨大な釜と格闘する給食調理員たちの姿があった。猛暑の日も極寒の冬も、何百人分もの食材を刻み、大きなスパテラ(木べら)でかき混ぜる作業は過酷を極めた。
現場を支える管理栄養士は、限られた予算内で基準となる栄養価を満たしつつ、子供たちが残さず食べられるよう献立の考案に頭を痛めていた。当時の「食育」は、嫌いなものも残さず食べるという指導が中心だったが、平成から現代にかけては「食の楽しさ」や「感謝の心」「地域食材の学び」へと理念が大きくシフトしている。
元調理員の女性はこう語る。「当時は大変でしたが、空っぽになって戻ってきた食缶を見たときの達成感は忘れられません。今40代になった皆さんが『あの頃の給食がおいしかった』と言ってくれるのが、何よりの誇りです」。一皿の背後には、子供たちの笑顔を願うプロフェッショナルの情熱が注ぎ込まれていたのだ。