騒動の渦中、メディアから追われ自宅マンションに引きこもる佐村河内夫婦の密着取材に踏み切った人物がいた。ドキュメンタリー映画『A』などで知られる映画監督の森達也氏だ。彼が手がけたドキュメンタリー映画『FAKE』は、単なるスキャンダル暴露本とは一線を画す異作として大きな波紋を呼んだ。
カメラが捉えたのは、長い髪を切り、サングラスを外した一人の傷ついた男の素顔だった。彼が本当にキーボードに向かい、覚束ない手つきでメロディを奏でる姿。客観的な事実を追求するはずのテレビや新聞が、いかに編集によって「分かりやすい悪人」を作り上げていくか。森達也監督の視線は、佐村河内氏の嘘を糾弾するにとどまらず、彼を袋叩きにすることで鬱憤を晴らす視聴者とメディア報道・ジャーナリズムの底知れぬ闇を暴き出した。