『呪術廻戦 懐玉・玉折』で描かれたエピソードは、かつて「最強の二人」として肩を並べていた若き日の情景から始まる。当時の夏油傑は、「弱者生存」こそが呪術師としてあるべき道であり、持てる力を弱者のために使うべきだという確固たる倫理観を保持していた。青々とした青春の日々と、無敵の全能感。しかし、星漿体・天内理子の護衛任務における破局と、伏黒甚爾という天与呪縛の刺客の介入が、その信念の脆さを暴き出す。
盤星教の信者たちが放った異質な拍手と笑い声。吐き気を催す呪霊の取り込みを日常的に繰り返す過酷な労働。仲間の命が虚無へと消えていく現実の前に、彼の精神はゆるやかに狂い始めていく。かつての正義感は、非術師という「弱者」への嫌悪感と激しい矛盾をはらみながら、冷徹な思想へと変質を遂げていったのだ。