出版元である新潮社がこのプロジェクトに注ぎ込んだリソースは規格外だった。老舗出版社としてのプライドをかけ、グラビア写真集の枠組みを超えた本格的な出版物として世に送り出す戦略が採られた。そこでカメラを託されたのが、光と影のグラデーションを捉える巧みな技術で知られる写真家・宮澤正明だ。
宮澤の手によって切り取られた構図は、肉体の美しさ以上に「人間の内面」を浮き彫りにした。木漏れ日や波しぶき、早朝の澄んだ空気感。それらが被写体の感情とシンクロし、1枚のキャンバスのような深い奥行きを生み出している。こうして完成した写真は、性的な視線に抗うような気品を纏っており、世間が期待したイメージを心地よく裏切ることとなった。出版業界において、これをアート写真と呼ぶことに異論を挟む者はもはや存在しなかった。