日本の麺類文化における歴史的転換点となったのが、伝説の職人・山岸一雄氏による「つけ麺」の誕生である。元々は従業員のまかないとして食べられていた冷やし麺を、1955年に「特製もりそば」としてメニュー化したのがすべての始まりだ。水揚げしたばかりの冷たい麺を、あたたかいスープにくぐらせて食べるスタイルは、瞬く間に全国の食通を熱狂させた。
一般的に「大勝軒」と聞くと一筋の暖簾分けを想像しがちだが、実は歴史的に大きく分けて二つの巨大な軸が存在する。山岸氏の人情味と「特製もりそば」の味を受け継ぐグループと、煮干し出汁の極みを目指したもう一方の勢力。この二大系譜の存在こそが、ファンの心を掴んで離さない真実の構造である。