65歳以降に認められる受給形態の核心にあるのが、遺族年金差額支給の仕組みです。これは2007年(平成19年)の法改正によって導入された制度であり、配偶者を亡くした本人が会社員や公務員として厚生年金に加入していた場合、自身の年金を優先して受給させる目的で設計されました。
具体的な遺族年金併給調整の計算方法は極めて厳格です。まず、本人が自ら納付して受給権を得た「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は全額がそのまま支給されます。その上で、亡くなった配偶者の報酬比例部分の4分の3相当である「遺族厚生年金」の額と、本人自身の「老齢厚生年金」の額を天秤にかけます。遺族厚生年金のほうが高い場合に限り、その差額分だけが「遺族厚生年金」の名目で上乗せ支給される構造です。
実態を明瞭にするため、会社員の夫(平均標準報酬月額から算定した遺族厚生年金の見込み額:月額10万円)に先立たれた妻のケースを想定し、働き方別の遺族年金受給額シミュレーションを比較検証します。
この試算が示す冷酷な現実は、長年パート先で厚生年金保険料を真面目に納めてきた層ほど、「自分で働いて年金を納めた分が、遺族年金の減額で相殺されて無駄になったのではないか」という感情を抱きやすい点にあります。これが妻の老齢厚生年金と遺族年金の狭間で生じる最も深刻な心理的摩擦です。