日本屈指の輸送量を誇る鉄道・交通インフラは、利便性の裏側に甚大なセキュリティ上の脆弱性を抱えている。中でも新宿駅を発着する埼京線は、歴史的に混雑率が著しく高いことで知られ、車内空間の過密度が犯罪を誘発しやすい構造を作り出してきた。混雑した車内では、意図的な身体接触と突発的な押し合いの境界線が極めて曖昧になる。
運行を担う東日本旅客鉄道などの事業者は、車内防犯カメラの増設や女性専用車両の導入を進めてきたが、混雑ピーク時の車内全域をリアルタイムで監視することは容易ではない。混雑するドア付近は乗降客の流動が激しく、加害者が犯行後に即座にホームへ逃走しやすい「出口の死角」となっているのだ。