彼の凄みは、なんと言ってもその歌声にある。背筋を伸ばし、一息吸い込んだ瞬間にホール全体を鳴らす声量は、海外から招聘された演出家たちをも唸らせてきた。高音域のクリアな響きはもちろんのこと、役に呼応して刻々と変化する声の色彩は、セリフ以上に観客の感情を揺さぶる。
楽譜通りに歌うだけの演技なら、努力次第で誰でもたどり着けるかもしれない。しかし、感情の奔流をそのまま歌に乗せ、役の叫びとして劇場空間へ解き放つ技量は、天性の感性と絶え間ないトレーニングの融合からしか生まれない。劇場の3階席、その最遠の隅にまで届く情熱の吐息。それこそが、彼が名実ともに帝国劇場クラスの主演スターへと駆け上がった最大の理由だ。