昭和から平成にかけての大相撲界において、寺尾常史という力士が放った存在感は異彩を放っていた。関脇・鶴ヶ嶺を父に持ち、サラブレッドとして期待されながらも、力士としては決して恵まれていない細身の体躯。しかし彼は、それを言い訳にすることは一度もなかった。
むしろ、その小柄さを活かしたスピードと鋭い出足こそが彼の最大の武器となった。土俵際で見せる粘り、相手の圧力を削ぎ落とす横への動き、そして何より観客を魅了したのが、直線的に相手を押し込む圧倒的な集中力である。大相撲本場所の土俵上で見せた一瞬の閃光のような相撲スタイルは、当時の子どもたちや女性ファンを熱狂させ、相撲人気を大いに牽引した。