黒インクのシェーディングのみで陰影と立体感を表現する「ブラック&グレー」は、タトゥー表現のなかでも独特の静寂と静謐さを漂わせるスタイルだ。刑務所内で限られた資材から生まれたストリートカルチャーをルーツに持ちながらも、現在では写真と見紛うばかりのハイパーリアリズムへと進化を遂げた。
このジャンルを世界的なメジャーシーンへと押し上げた立役者が、伝説的なアーティストである「キャット・フォン・D」だ。テレビ番組を通して彼女が見せた緻密なポートレート写真の再現技術と、女性彫師としての圧倒的なカリスマ性は、業界のジェンダーバランスを塗り替えた。人物の表情、毛並み、金属の質感を肌の上に刻み込む精密な表現力は、彫る側と刻む側の双方に極めて高いデッサン力と忍耐を要求する。