4K解像度のスマートフォン画面を倍速でタップし、効率よくストーリーを追う日常。そんなタイムパフォーマンス最優先の時代への静かな抗議のように、いま若者たちが地下のドアを叩いている。チケット1枚で2本の作品を観られる「2本立て」は、かつて昭和の名画座が提供してきたリーズナブルな娯楽の形だ。しかし、情報が氾濫する現在において、この「逃げ場のない強制的かつ濃密な3時間半」こそが、かえって新鮮な没入空間として機能している。
「家で動画を見ていると、どうしても途中で通知をチェックしてしまう。でも、ここでは暗闇とスクリーンの光だけに集中するしかない。それが最高のデジタルデトックスなんです」。仕事帰りに足繁く通う20代の客はそう笑う。1本目と2本目の間に挟まる15分ほどの休憩時間、観客たちはロビーで静かにパンフレットをめくり、余韻に浸りながら深呼吸をする。倍速再生も一時停止もない時間が、擦り減った心を優しく解きほぐしていく。