圧倒的な緊張感で観客の鼓動を早める重厚なサスペンスドラマから、人間の愚かさと愛おしさを丁寧に掬い上げる濃密なヒューマンドラマまで、その振れ幅の広さは群を抜いている。ジャンルという枠組みを易々と軽やかに飛び越えていく変幻自在の表現スタイルは、まさに真骨頂と言えるだろう。
役柄ごとに声のトーンや歩き方、視線の揺らぎに至るまで細部を構築し直し、完全にキャラクターと同化してみせる。ストーリーの表面的なスリルにとどまらず、登場人物が抱える葛藤や悲哀の深層までを浮き彫りにする表現力こそが、物語全体の強度を決定づけている。