脳は全体重のわずか2%程度の重量しか持たない。しかし、体内を巡る全酸素の20%、ブドウ糖の25%を消費する巨大なエネルギー消費器官だ。ほんの数分間血流が途絶えるだけで、数百億の神経細胞が不可逆的な損傷を受ける。この絶体絶命の脆さをカバーするために人体が獲得した進化の結晶、それが脳底の環状動脈網である。
前大脳動脈、前交通動脈、内頸動脈、後交通動脈、後大脳動脈が輪を描くように結ばれ、互いに血圧と血流量を相殺しながら平準化を図る。一歩間違えれば致命傷となる脳血管障害に対し、この円環構造が機能しているか否かが、後遺症の有無や生存率を決定づけると言っても過言ではない。