テレビでの清廉なイメージを一変させ、日本中を震撼させたのが映画『砂の器』における天才作曲家・和賀英良役である。松本清張の原作を野村芳太郎監督が映画化したこの傑作サスペンス映画において、彼は言葉を削ぎ落とした沈黙の演技で、宿命に翻弄される男の孤独と狂気を見事に体現した。
クライマックスで奏でられる宿命のピアノ演奏シーンは、映画史に残る名場面として語り継がれている。過去を隠蔽するために罪を重ねる冷酷さと、親子の絆に対する苦悩。彼の美しくも悲痛な表情は、観客の胸を激しく打った。監督の巧みな演出と彼の圧倒的な演技が見事に結実した瞬間であった。