壇ノ浦の戦いで破れ、都を追われた平家一門。武将・平清盛の面影を宿す落人たちが、源氏の追手を逃れてたどり着いたのが、ここ湯西川温泉の始まりだ。鯉のぼりを揚げない、鶏を飼わない、火を焚く煙を立てない。追手に見つからぬよう身を潜めて暮らした彼らの風習は、今も地域に深く根付いている。
山あいにそっと湧き出る湯を見つけ、傷を癒やした武士たちの物語。それが今や、疲れた現代人の心をほぐす極上の温泉旅館文化へと結実した。川のせせらぎを聴きながら湯に身を沈めると、時空を超えて歴史の浪漫に引き込まれていくような感覚を覚える。