「フィルムのカタカタという回転音が聞こえない映画館なんて、私に言わせればスパイスの抜けた料理みたいなもんですよ」。映画館の歴史を長年支えてきたベテラン支配人は、照れくさそうに笑いながら映写室へと案内してくれた。
デジタル化の波が押し寄せた際も、完全なデジタル移行を選ばず、古典的な映写機のメンテナンスを続けてきた。パーツの調達は年々難しくなり、修繕費用の工面にも頭を悩ませてきたという。それでも「この場所でしか観られない映写の味」にこだわり続けた結果が、現在の再評価へと繋がっている。「何度も廃業の二文字が頭をよぎった。だが、灯りを消さずに粘り勝った」という言葉には、現場を守り抜いた者ならではの重みが宿る。