事故が起きたのは、金曜日の午後5時過ぎ。夕方の散歩中だった。有明地区は、2026年現在、ドローンと地上型配送ロボットが日常的に行き交う「完全自動物流特区」に指定されている。
歩道を走行していた宅配ロボットが、急な進路変更を行った。それに驚いたロシナンテは、リードを引きちぎって走り出した。運悪く、その先にはスマート物流網の地下へと続く、メンテナンス用のハッチが開いていた。システムエラーで一時的にロックが解除されていた隙間だ。ロシナンテは、吸い込まれるようにその暗闇へと消えていった。
「一瞬の出来事でした。名前を叫びましたが、ロボットの駆動音にかき消されてしまって……」。飼い主の佐藤さんは、当時の恐怖をそう振り返る。ロボットの高度なセンサー群は、障害物としてのロシナンテを認識し回避行動をとったが、その結果として犬がどこへ逃げるかまでは予測できなかったのだ。