江戸の昔から相撲と切り離せない歴史を歩んできた墨田区。その東側の拠点である錦糸町は、単なる繁華街ではない。日本相撲協会に所属する部屋が点在し、かつて土俵に上がっていた男たちが次なる挑戦の場として飲食店を開く、いわば「相撲食文化の実践地」だ。
なぜ今、ちゃんこ鍋なのか。そこには外食産業における「本物志向」の強まりがある。過度な装飾を排し、食材本来の旨味を極限まで引き出す調理法。大人数が囲む大鍋から漂う出汁の香りは、現代人の心と体を芯から温める。街を歩けば、看板に掲げられた四股名や名門部屋の紋章が目に飛び込み、一歩足を踏み入れれば、威勢の良い掛け声と深い出汁の芳香が客を迎える。