なぜ今、第一線で活躍するサウンドプロデューサーたちはあえて男性声を選ぶのか。その理由は、グローバルな音楽シーンにおけるトレンドの変化と見事に一致している。80年代の雰囲気を宿したSynthpopや、チルなローファイ・ヒップホップ、ダークなオルタナティブR&Bなど、中低音域の質感が楽曲全体の空気感を決定づけるスタイルが世界中で主流となっているからだ。
高音域で突き抜ける女性声とは対照的に、男性ライブラリの太く落ち着いた声質は、複雑なコード進行やビンテージシンセの音色に自然と溶け込む。アヴァンギャルドなクラブミュージックから洗練された商業ポップスまで、楽曲に絶妙な「影」と「哀愁」をもたらす至高の楽器として、彼らの歌声が重宝されているのだ。