巨大な存在感を持つ父親である石原慎太郎や、お茶の間の人気者である石原良純という家族の存在は、若き日の彼にとって時に重圧となり、時に複雑な影を落とした。世間が求める「石原家の息子」というステレオタイプな視線に対し、彼は一貫して静寂を守り、作品という答えだけを提示し続けた。
アトリエを訪れた取材陣に彼がふと漏らした未公開のエピソードがある。「家の中では常に力強い言葉が飛び交っていた。だからこそ、自分は言葉にならないもの、色や光のグラデーションの中にしか自分の本当の居場所を見出せなかったのかもしれない」。偉大な父の背中を見つめつつも、父とは全く異なる静的なアプローチで世界と対峙しようとした姿勢こそが、彼を類まれな抽象画家へと育て上げた原動力だ。