現場の混乱は、制限エリア内の店舗スタッフが「貸出中のハサミが見当たらない」と報告したことから始まった。航空機の機内へ持ち込みが厳しく禁止されている刃物が、もし悪意のある人物の手に渡っていたら――。ハイジャックや機内テロの脅威が頭をよぎる以上、現場の指揮本部に躊躇の猶予はなかった。
搭乗ゲート付近の制限エリアにいたすべての乗客に対し、直ちに退去命令が出された。お土産を手に搭乗を待っていた家族連れやビジネス客は、理由も分からぬまま退去を余儀なくされた。保安エリアの外へと押し出された人々で出発ロビーは溢れかえり、蒸し風呂のような熱気と不安、怒号が錯綜する異様な光景が広がった。