対局室に漂う重厚な緊張感の中、彼の装いはひときわ異彩を放つ。ファンや関係者から「貴族」の愛称で親しまれる理由は、単に着飾っているからではない。オーダーメイドの格式高いスーツ、洗練されたネクタイのノット、そして仕立ての良さが際立つシャツ。そこには、盤上に臨む棋士としての矜持と、対局という空間への深い敬意が込められている。
「自分にとって衣服は、戦いに挑む精神を整える甲冑のようなもの」。かつて本人が明かしたこの言葉通り、欧州のクラシック文化やアンティークへの造詣の深さが、洗練された佇まいを創り出している。盤上の指し手と日々の装い、その双方がひとつの「美意識」によって貫かれているのだ。