見城の編集者人生を語る上で欠かせないのが、狂気とも言える仕事への没入度だ。『月刊カドカワ』の編集長時代、彼は作家やアーティストの懐に飛び込むためなら手段を選ばなかった。相手が何を欲しているのか、何を恐れているのかを徹底的に観察し、相手のプライベートにまで踏み込んで信頼を勝ち取る。手紙を何百通も書き殴り、酒を酌み交わし、時に激しく衝突しながら信頼を築き上げていった。
尾崎豊の遺作となった手記や、石原慎太郎の『弟』など、彼が手がけたミリオンセラーの裏には、単なるビジネス関係を超えた人間ドラマが存在する。「売れる本」を狙って企画するのではなく、「この人間の本質を世に出さなければ自分が死ねない」という執念。それこそが、時代を超えて読者の胸を打つベストセラーを生み出す原動力だったのだ。