「ノウマク・サンマンダ・バザラ・ダン・カン」という不思議な響きは、古代インドの言語であるサンスクリット語(梵語)の音をそのまま漢字に当てはめた「音写」です。漢字では「曩謨三曼多縛日羅赧憾」と表記されます。
この言葉をパーツごとに分解して直訳すると、不動明王が持つ神聖な意味が明確に浮かび上がってきます。
・ノウマク(曩謨 / Namas):「帰命する」「心から信じ、帰依します」という祈りの言葉(南無と同じ語源)。
・サンマンダ(三曼多 / Samanta):「あまねく」「遍(あまね)くすべての」「一切の」。
・バザラ(縛日羅 / Vajra):「金剛」「雷神の武器のように堅固で壊れない力・智慧」。
・ダン(赧 / ānāṁ):「〜尊たちに」「諸尊へ」。
・カン(憾 / Hāṁ):不動明王そのものを象徴する種字(しゅじ・種子真言)。激しい忿怒の炎によって一切の障害を焼き尽くす力。
全体を意訳すると、「あまねくすべての金剛の力を宿す諸尊に心より帰依いたします。怒れる不動明王よ、あらゆる迷いと障害を打ち砕き給え」という崇高な誓いと救済への祈りになります。
不動明王の真言には、短縮形の「一字心真言」、標準的な「慈救呪(じきゅうしゅ)」、そして最も長い「火界呪(かかいしゅ)」が存在します。「ノウマクサンマンダバザラダンカン」は慈救呪の核となるエッセンスを凝縮した真言であり、日常の祈りにおいて最も親しまれている形態です。