1980年代初頭に地元の若者たちの情熱から始まった「しかりべつ湖コタン」は、いまや北海道の冬を象徴する文化遺産とも言える存在だ。湖面を覆う分厚い氷を切り出し、ドーム状に積み上げて作られるイグルー(氷の家)は、建築工学的な美しさと高い保温性を兼ね備えている。
中でも世界的な知名度を誇るのが、氷の上に設置された「氷上露天風呂」だ。結氷した湖面に湯船を沈め、脱衣所まで氷で作り上げたこの場所では、マイナス20度の澄み切った空気の中で極上の温泉に浸かるという極限の体験が味わえる。春が訪れれば氷はすべて解け、湯船の痕跡さえも自然へと還っていく。何ひとつ環境に残さないこの設計思想こそ、現代のサステナビリティの原点と言えるだろう。