編集室で最後の最後まで議論が紛糾したのが、物語のクライマックス直前に位置する「空白の14分間」の扱いだった。製作幹部の一人は、絞り出すような声で当時の緊迫感を振り返る。「あのシーンを残せばレイティングが跳ね上がり、観客の精神的な負荷も限界を超える。しかし削れば作品の魂が変質してしまう――まさに狂気の選択だった」。
寒冷地の廃工場で撮影されたその未公開シークエンスには、登場人物の倫理観が完全に崩壊する決定的瞬間が生々しく記録されていた。光と影が激しく交錯する中、長回しの一発撮りで捉えられた生々しい感情の暴発。テスト試写では数名の関係者が途中で席を立ったほどの衝撃度だったという。最終的に劇場公開版からは外されたものの、この幻のフッテージこそが作品の持つ真の牙であり、今後のディレクターズカット版への布石であることは間違いない。