インターネット上の掲示板やSNSでは、医学的事実とは乖離した極端な俗説が一人歩きしています。記者の検証によって判明した、患者が陥りやすい2大誤解を解き明かします。
誤解1:「坐骨神経痛にまったく効かない」の裏にある痛みの取り違え
「腰から足にかけて激痛が走るのに、タリージェを処方されても全く効かない」という不満は医療現場でも頻発しています。しかし、タリージェが坐骨神経痛に効かないと感じる最大の要因は、薬の欠陥ではなく「痛みの種類の誤診・混同」です。
タリージェが効果を発揮するのは、神経そのものが圧迫・損傷されて異常信号を発する「神経障害性疼痛(ピリピリ、ジンジン、刺すような痛み)」に対してのみです。一方で、坐骨神経痛と診断された患者の中には、腰や臀部の筋肉の極度な緊張による「侵害受容性疼痛(筋筋膜性疼痛)」や関節の炎症が主因であるケースが多々あります。筋肉のコリや炎症に対してタリージェをいくら増量しても鎮痛効果は得られません。また、初期用量(5mg×1日2回)の段階で「効果がない」と自己判断し、治療用量(10〜15mg×1日2回)までステップアップする前に諦めてしまうケースも多発しています。
誤解2:「タリージェを飲むと認知症になる」という都市伝説
高齢の親を持つ家族の間で懸念されているのが、タリージェの認知症への影響です。「薬を飲み始めてから物忘れがひどくなった」「呂律が回らずボーッとしていて認知症が始まった」と焦る相談が寄せられます。
日本神経学会や老年医学の専門見解によれば、タリージェが脳の神経変性を引き起こしてアルツハイマー病などの認知症を発症・進行させるというエビデンスは存在しません。この現象の正体は、薬剤の中枢抑制作用によって一時的に引き起こされる「薬剤性ブレインフォグ(脳の霧)」や、高齢者特有の「一過性のせん妄・アパシー(自発性低下)」です。薬の血中濃度が安定するか、減量・中止すれば認知機能は元の状態に回復します。これを不可逆的な認知症と誤認して過剰な恐怖を抱くことは、適切な疼痛治療の機会を奪う結果につながります。