美能幸三の手記に着目し、週刊誌でノンフィクションとして連載を開始したのが作家の飯干晃一だった。実在の当事者の手記をベースにした手記文学は瞬く間に読者を魅了し、映像化の企画が動く。それに目を付けたのが映画会社の東映である。当時の映画界は、従来の「かっこいい任侠スターが義理人情で悪を斬る」というお約束の時代劇風ヤクザ映画に行き詰まりを感じていた。
東映が放った金字塔『仁義なき戦い』は、映画界に革命をもたらした。メガホンをとった監督の深作欣二は、手ブレカメラやドキュメンタリータッチの斬新な手法を駆使し、スクリーンのなかに生々しい暴力と狂気を充満させた。そして、美能幸三をモデルとした主人公・広能昌三を演じた主演の菅原文太は、泥臭くも生きることに執着する人間の業を熱演。従来の任侠映画の虚飾を剥ぎ取り、実録映画という新たなジャンルを不動のものとしたのである。