館内には趣の異なる複数の大浴場が存在するが、とりわけ圧倒的な美しさを誇るのが「雪月花」と名付けられた立ち湯だ。深さ110センチメートルという独特の浴槽に身を浸すと、立ち姿勢のまま目線がちょうど渓流の水平線と重なり合う設計になっている。
目の前に広がるのは、ガラス越しではない生の原生林だ。新緑の眩しさ、紅葉の燃え上がるような赤、そして冬の静寂を彩る銀世界。無色透明の自家源泉は肌当たりが柔らかく、身体の芯から温もりが広がっていく。湯船と森の境界線が消え去り、まるで自然の風景の中にぷかぷかと浮かんでいるような錯覚に陥る。