最終決戦の死線を超え、心身ともに限界を迎えていた炭治郎に宿った鬼の血。読者が「救済」を確信したまさにその瞬間、物語は暗転した。鬼殺隊が総力を結集して手にしたはずの勝利は、一瞬にして崩れ去る。あまりにも残酷な、そして息をのむような緊張感。そこにあったのは、従来の少年漫画にはない異質なカタルシスだ。
炭治郎という男の本質は、どこまでも深い慈愛にあった。敵である鬼にすら手を差し伸べ、その背負った悲哀に涙を流した彼が、自ら牙を剥き、仲間に襲いかかる。この皮肉な逆転劇こそが、クライマックスにおける感情の振れ幅を極限まで跳ね上げた。